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関口の家 (関口T邸) / 東京都文京区
「小さな堰(せき)」を連ね、
人の動きや視線の分岐を重ねる
ピアノ室のある2階建て住宅である。ピアノ室を囲む箱と生活の場を挟む2枚の独立壁によるRC躯体に、木架構を掛け渡す形式とした。
計画地は東京都文京区関口、神田川の流れから緩やかに続く坂道を上った高台の縁の密集市街地に位置し、敷地内にも緩やかな傾斜がある。その地形を生かした内部の小さな床段差を関口の地名の由来となる「 堰(せき) 」として再解釈した。
この「堰」は、川の流れを二手に分ける伝統の仕組みである。この地の大洗堰は、神田上水として川を分岐させ江戸の町を支える重要な水脈の端緒であった。江戸川(後の神田川) の水位を上げ、高い位置で取水し、枝分かれしながら広い地域へ水を届けていた。ここでは堰が流れを二手に分ける効果に着目し、各所の小さな床段差を上り下りする度に堰の連なりによって空間と視線の分岐が重なり、2つの行き先/空間と視線の行方の選択の連続によって、変化とリズミカルな空間体験を生むことを意図した。
また内外の風景を構成する現しの構造体は、堰のリズムと合わせて、RC造、RC造主体+木造、木造主体+RC造、木造と徐々に移り変わり、小径木部材とラーチ合板型枠RCとの様々なグラデーションが対比を際立たせる。
場所の持つ小さな特性や伝統を見つけ出し、折り重ね拡張しながら空間構成として丹念に掬い上げること、それは都心部においても人がこの場所/この環境に根付き暮らし住むということが小さな地歴の積層の上にあることを表出し享受するためのきっかけとなることを考えた。
写真 / 稲継泰介
構造設計:坂田涼太郎構造設計事務所
テキスタイルデザイン(障子布)
:押鐘まどか
ー掲載誌ー
・新建築住宅特集 2024年11月号
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